「初音ミク」という道具を使うための契約
小飼弾氏のエントリ「
VOCALOIDはただの道具です」について、100字のはてブコメントでは収まりきらなくなったので、エントリを起こしておきます。別に専門家じゃないですけど^_^;
まず、冒頭の「そんなこと禁じる権利は誰にあるのか?」という点について、
この権利は VOCALOID を開発したクリプトン社にあります(言うまでもないことですが)。開発者ブログに書かれているとおり、「
VOCALOIDライブラリ使用許諾契約書」にこの条項が記載されていて、利用者がこれに同意したうえで VOCALOID を使い始めるのであれば、
利用者はこの契約を守る義務があります。クリプトン社は、契約内容を決める権利があると同時に、契約に同意した利用者に VOCALOID の使用を認める義務がある(拒否できない)のであって、最後に述べられている権利と義務は別のものを指しており、的外れと言わざるを得ません。
※ここでは、利用者が公序良俗に反すると認識した上で使ってよいかという問題ですので、利用者が「これは芸術だ、公序良俗に反していない」というものをどこまでクリプトン社が認めるか、という点は無視します。どうせ裁判でもしなければ結論はでませんし。
また、続いて言い換えられている、「コンパイラ」に対する「公序良俗に反するプログラム」とか「包丁」に対する「公序良俗に反する味」については、「VOCALOID をコンパイラや包丁と同列に扱うのがおかしい」のではなく、コンパイラや包丁については、
通常、コンパイラを使い始めたり、包丁を買う時には、そのような契約がないからこそ、公序良俗に反するプログラムの開発や公序良俗に反する味を作るためにも使用できるのだといえます。
※コンパイラについては、ウィルスのような公序良俗に反するプログラムの開発を禁じるべきか、という論点はあります。しかし、開発までは研究としても行われることがあり、実際の被害は頒布という行為によって引き起こされるわけですから、開発そのものを禁じることはやりすぎかもしれません。公序良俗に反する味は、意味がわからないので無効扱いされるかもしれませんが。
公序良俗に反する契約は無効とされる場合もありますが(民法第90条、ねずみ講契約など)、今回の場合は、人格権を持つ声優が使われていること、声優あるいは VOCALOID(または両方)のブランドのイメージを守るための条件として記載されていると考えられますから、
公序良俗に反する条項とは認められないでしょう。むしろ、将来、他の声優の方により後継バージョンをリリースすることも考えているなら、(企業が考える)ネガティブイメージを排除することは、普通に考えられることであって無効とみなされる可能性はまずありません。100%合成音の場合についても、基本的には契約が前提となりますから、契約に同意した利用者は、これを守る義務があります。
※この条項がなかった場合に、声優の人格権が VOCALOID にまで適用されるかどうかについては、ちょっとわかりませんが(100%合成音なら人格権はない)、自由なセリフをしゃべらせる(歌わせる)ことができるという性格上、公序良俗に反する使い方を禁じることはできないと思います。だからこそ、この条項があるのでしょう。
まあ、個人的には、条項の有無にかかわらず「初音ミクの使い方なんて“何でもあり”だぜ」という認識が広まったとしたら、今後、こういうソフトウェアに協力してくれる声優がいなくなってしまうのではないか、という想像をされないものかと思いますけどね。