sinx 氏への返信
「
「著作権は混迷」「ダメと言ってもネットは止まらない」──東大中山教授」(ITmedia、岡田記者)について、はてブで「エキサイトのキャッシュサーバーは日本にあるし、ホリエモンが捕まったのは著作権じゃないし、米国でも著作権侵害は訴えられる。ベルヌ条約が古いといいつつWIPO条約にも触れてない。わざとか?→
http://tinyurl.com/37rrat」と
コメントしたところ、sinx 氏から「id:mohnoの著作権関係記事における重箱つつきは異常」という
コメントを受けた。どんな人だろうと思ってみてみたら、これしかブックマークがないようだったので「これを言うためだけに、はてなのアカウント取ったのか。はてなスターがいっぱいだね:-) ベルヌ条約がネット以前と言うだけでWIPO条約に触れていないのは問題だと思うぞ。岡田記者の作為で割愛しているのでもなければ。」と
コメントした。本日、sinx 氏が「
ゆっくり返信まった結果がこれだよ!」というエントリを書かれたようなので、これに返信する。(以下、ですます調)
まず、sinx 氏の質問である「ホリエモンを出した理由」について答えます。これは、「日本でもIT産業を興さないと将来はない」という発言があったので、日本でもIT産業を興している例は色々あるけれど、かつてIT企業の成長株としてもてはやされていたホリエモン時代のライブドアについては、著作権じゃない理由で潰された(それもまた“足かせ”であるという)ケースとして挙げました。まあ、企業買収とか株式分割のような錬金術に入れ込んでいる会社のどこが“IT企業”なんだという意見はあるでしょうし、何より100字という制限に埋め込むにはわかりにくい例だったという反省はあるのですが、主旨はそういうことです。
以下は、とくに質問されていないことですから、余談です。
エキサイトのキャッシュサーバーについて色々質問を出されているという行動力はよいと思うのですが、もっと簡単にわかります。
実際にエキサイトで検索してみればいいんです。以下の図が検索した例ですが、「キャッシュ」という個所にマウスカーソルを持っていくと "http://www.excite-cache.jp/..." と表示されます。excite-cache.jp がキャッシュサーバーかどうかわからなくないですよね? エキサイトのキャッシュサーバーが日本にあることは、いわゆる日の丸検索エンジンの法整備の際に出ていた話で、私の発見ってわけじゃないですけど。
また、「著作権法がネットビジネスの阻害要因になっている?」にも書いたとおり、法律的にグレーゾーンであるというのは同意します。日の丸検索エンジンのために“真っ白”にしておく必要があって法整備の話が出たという件も含めて。私は別に現行の著作権法がベストであり改訂が必要ないなんて思っていません。実際、要望についてパブコメも出してます。でも、このエントリに書いたとおり、検索エンジンについては「黙示の許諾」という逃げ道はありますし(嫌なら robots.txt を置けば回避できる)、エキサイトが違法扱いを恐れてキャッシュサーバーを海外に移転させようという動きは見られないわけです。つまり、「検索エンジンの法整備ができてないから、検索エンジンビジネスを阻害している」なんて証拠はないんです。そもそも、検索エンジン側が「日本の法律を回避するために海外にサーバーを置いています」って発言したことってあるんでしょうか。
これも先のエントリと重複しますが、それこそ「海外のサーバーを使えば解決」というのなら、そうすればいい、ってだけの話になりますよね。はからずも sinx 氏が書かれている「国内のサーバ事業は著作権法によって機会損失はしてる」のだとしても機会損失しているのはサーバー事業者であって、新しいビジネスを興そうって人(会社)ではありません。しかし、データセンター作るのってけっこう大変なことですから、米国企業が米国内にそれを設置するということは普通に考えられることです。あと、米国のフェアユースに夢を抱いている人って多そうな気はしますが、フェアユースがあるから「新しいビジネスは大丈夫」なんて保証はどこにもありません。むしろ、米国では私的複製すら明文の規定がないので、権利者側に“フェアじゃない”とみなされたら裁判沙汰です。実際、検索エンジン側が訴えられて負けたケースだってあります。でも、日本では、その手の訴訟が起きた話は聞いたことがありません。むしろ、2ちゃんねるの西村氏のように賠償金踏み倒して何のお咎めもないっていうくらい、日本はユルユルな国に見えます。
そして、この文脈で「米国はMicrosoft、Apple、GoogleなどIT企業が一流企業となっているが、日本の一流企業の顔ぶれは変わらない」という発言が出てきたことも疑問です。少なくとも、Microsoft や Apple はコンテンツを提供する側でもあります。むしろ、著作権が保護されなければネットビジネスは成り立ちません。音楽なんて iTunes Store で買わなくても無許諾ダウンロードを利用すればいいんだとか、Windows は自由にコピーしていいから広まったなんて話もありません。それに日本の著作権法が問題なら、日本ではこれらの企業が優位に立てないはずですよね。逆に任天堂がゲームの分野で世界をリードできるのも著作権による保護があるからです。一部の米国会社だけを抜き出して「日米の著作権制度の違いがビジネスを阻害」なんて言ってしまうのはナンセンスなだけですよ。
まあ、同一性保持権が強すぎるという意見など同意する部分はあります。これは、同一性保持権の不行使は無効という見解があるという話を聞いていたからなのですが、小倉弁護士はこれを一蹴されていまして、今のところ、そんなに気にしなくていいんじゃないかという気がしています。あと、物権法的という点については「固定されたものが著作物」という認識を指しているのではないかと思うのですが、私も固定にこだわる必要はないと思っています。
すでに書いたとおり、ベルヌ条約が古いというだけで WIPO 条約を取り上げていなかったりして、「著作権の第一人者」が語ったにしては、とても恣意的な内容に見えます。実は、「」以外の部分は中山氏ではなく岡田記者の意図が埋め込まれているんじゃないかとも勘ぐっているのですが、これは現場にいなかったのでなんともいえません。ともあれ、よくもまあこんなにポジティブなコメントばかり集まったものだというのが私の感想です。
※2008.10.9追記
sinx 氏がエントリを削除されたため、ご本人にいただいたオリジナルデータ(xml)を再掲している。
→
sinx 氏の過去ログ(xml形式)
形式変更については、いずれ。