競争を排除してよいの?
先の
エントリについて、小倉弁護士に取り上げてもらったのだけれど、そのエントリの
指摘や、はてブの
コメントは少し意外である。
先のエントリでは、iTunes の品ぞろえが悪いのはシェアの問題で、市場規模が大きい携帯向け音楽配信の品ぞろえはずっとよい、という話を書いたわけだが、なぜか「着うた配信に許諾を与えることと、iTunes等のパソコン向け音楽配信に許諾を与えることとは矛盾しない」と指摘された。別に矛盾するなんて書いてないし、実際 iTunes に登録されている楽曲は(もちろん)ある。そもそも、携帯向け音楽配信と比べ物にならないとはいえ、パソコン向けの音楽配信で強いのはやはり iTS なんじゃないだろうか。と思って、mora と iTS で今週のランキングで調べてみたのが、以下である。
| 「曲名」/アーティスト |
mora |
iTS |
| 「60s 70s 80s」/安室奈美恵 |
× |
× |
| 「LIFETIME LOVE」/THE ALFEE |
× |
× |
| 「ずっと一緒さ」/山下達郎 |
○ |
○ |
| 「炎神戦隊ゴーオンジャー」炎神ソウルセット/高橋秀(Project.R) |
× |
× |
| 「夢が咲く春/You and Music and Dream」/倉木麻衣 |
× |
○ |
| 「そばにいるね」/青山テルマ fea. SoulJa |
○ |
○ |
| 「吾亦紅」/すぎもとまさと |
× |
○ |
| 「ワッハッハー」/関ジャニ∞(エイト) |
× |
× |
| 「海雪」/ジェロ |
○ |
○ |
| 「Sunny Day」/藤木一恵 |
○ |
× |
最後の藤木一恵さんがソニー所属で意図的にiTSには登録していないのだろうが、やはり全体としては mora(4曲)より iTS(5曲)の方が多い。(そもそも2割じゃないね、って話もあるのだが) これって、パソコン向けの音楽配信市場における「iTS の強さ」をあらわしているのではないだろうか。楽曲の取り扱いについても、当然「取り分はいくら?」「どれだけ売るつもり?」なんて話があることは容易に想像できるわけで、そうした
駆け引きの結果が現在の品揃えなのではないだろうか。
いや、もちろんレコードとか CD のような物理メディア時代には「特定の卸売業者にだけ流す」なんて発想はなかったわけだけれど(たぶん)、「無条件で許諾する」のであれば、それと引き換えに価格がレコード会社側の言い値で決まっちゃったりしないのだろうか。だって、サービス業者の言い値で決められないよね。iTS が日本に上陸するという頃に、他の音楽配信業者がこぞって料金を下げたという記憶もあるわけだけれど、そういう競争を否定しちゃうことになりはしないだろうか。いや、ほんとうにコンテンツベンダーに許諾権を認めないのであれば、
HD DVD が blu-ray に立ち向かうのはずっと楽だったはずだ。
それこそ、アメリカでは iTS に600万曲以上の楽曲がそろっているけれど、Zune Marketplace にあるのは300万曲だ。楽曲をそろえる苦労がなくなれば、新参者は何の苦労もなく先行者と同じ品ぞろえができることになるわけだけど(デジタル音楽なんて“在庫”を用意する必要がないのだから)、それって
“iTS が望んでいること”なんだろうか、とも思う。「iTS で独占配信」なんて認めないよ、というのであれば、むしろ喜ぶ競合の配信業者は多いと思うのだけど。というか、誰もが iTS と同じ条件で同じコンテンツを揃えてビジネスを始められるのだとしたら、参入者が凄く増えそうな気はする。まあ、店が増えるのと同じか。どうなんだろう。
あと、「儲かるとわかってるのにやらない」というのは株式会社としては致命的な問題なのだから、そういう邪推ってどうなのかと思う。手間がかかることだって儲かるとわかってたらやるでしょ。ただ、「ゼロじゃない」くらいにしか儲からないんだったらやらないかもしれないけれど。そりゃあ、やっぱり儲かる度合いが高い方を優先するでしょ。まあ、ソニーの囲い込み戦略がほんとうに「儲かる事」なのかどうかまではわからないが、iTS が要求する取り分を勘案して、自分のとこだけで売る方がいいや、という判断があるのかもしれないしね。少なくとも、そうした考察がなくて「偏頗」だとか言ってみても、なんか全然説得力ないな、と感じる次第。っつか、「著作権法」と「不正競争防止法」は別物だってば。