MIAU のパブコメに対して
MIAU が送付したという「
「知的財産推進計画2007」の見直しに関するパブリックコメント」を今見た。ああ、もっと早くに公開されていれば・・・^_^; 個別にコメントしてみよう。
・著作権法における非親告罪化について
……著作権者が黙認するような事例について、著作権者の意思を無視して刑事告訴するという不条理が生じてしまいます。これはあってはならないことです。
ナガブロさんのエントリ「
著作権侵害は非親告罪にした方がよい」を読む限り、著作権者の意思を無視して刑事告訴するということは考えられない。このエントリにも書かれているとおり、著作権者が許諾していれば侵害ではないのだから、それを確認もせずに告訴できるとは思えない。「あってはならないこと」は、非親告罪化しても起きない。
・私的使用複製の違法化について
※ちなみに、私は「ダウンロード違法化」には消極的反対の立場である。
1. 複製にあたるダウンロードと、複製にあたらないブラウジングやストリーミング視聴……
むしろ、この区別(「アクセス」と「複製」)を明確にすることが望ましいと考えている。たとえば、ワンセグ受信機で、圧縮データを展開することすらも「複製」と解すことは不適切である。
2. 国際的な法制度の不整合があること。
違法コンテンツのダウンロードは、すべての国で適法なのではない。委員会資料を読む限り、適法であることが明文化されている例はむしろ少ないのではないか。その場合、国際的な整合性に言及すると、ダウンロード違法化を正当化することになるのではないか。
3. ……適法公開なのか違法公開なのかを、合理的な理由に基づいて判断する術が無く……
「違法公開かもしれないと考えて、それを容認してダウンロード」した場合で、それが実際に違法公開であった場合、「情を知っていた」として責任を問われることに何の問題があるのだろうか。
4. 架空請求の踏み台
これは問題のすり替えである。無条件で法制度の変更を否定するようなもので、受け入れがたい。むしろ正しい認識(リテラシー)を広めるべきである。
5. 通信の秘密の侵害
調査のために違法な行為が行われるとの前提に立つことは、調査のために違法な行為を行わないという確約を取ることで、問題提起そのものが否定されてしまうのではないだろうか。
6. 学問・研究・報道等で違法ダウンロードについて調査する行為
たとえば、一般の Web サイトのセキュリティを確認するために「ハッキングする行為」も、現時点では違法行為である。むしろ、こうした目的については別途法制化すべきではないだろうか。その場合、もちろん研究と称するだけの行為についてまで適用すべきではない。
7. 「ダウンロードによる被害」
「アップロードによる被害」があるなら、それに対応する「ダウンロードによる被害」は存在するだろう。1件のアップロードによる被害に比べて、1件のダウンロードによる被害は軽微であろうが。一方で、法改正が不要であるという主張の根拠は乏しくないのだろうか。
・著作権保護期間延長論について
※私は「保護期間延長」には反対の立場である。
1. ……新たな創作へのインセンティブが存在しないということは、経済学上ほぼ争いがありません……
遺族という言葉から推測される個人著作者について、創作へのインセンティブの有無が、「経済学」によって語られることは不自然ではないか。逆に、映画のようなコストのかかる企業の創作物については、収益がインセンティブであり、保護期間の延長によって、その額が増加するのであれば、それを望むのは当然の姿勢ではないか。一般に、子孫のために有形財産を残そうという意思を持つ人がいるのと同じく(子孫にとっては不労所得)、著作権という形で子孫に財産を残したいと考えることを否定すべき合理的理由はあるのだろうか。
3. 著作権保護期間が延長されれば、その死蔵期間が無駄に長くなります
著作権の保護下にあるから著作物が死蔵されるという判断は間違いである。げんに著作権の保護下にある著作物が死蔵されず、次々と世に出ている。保護期間が切れたら、対価を払うなどして許諾を得る必要がなくなるというだけで、それによって死蔵されなくなるという保証は何もない。
4. 古典作品を埋もれさせない、著作者やその創作に対して思いやりのある制度
3. に同じ。保護期間内であろうと許諾を受ければ済む話である。
※追記。
揚げ足を取ってばかりなのも何なので、MIAU の主張をフォローする話も書いておこう。
何度も書いていることだけれど、私が、いわゆる「ダウンロード違法化」に反対なのは、もちろんフリーライドを容認するためではない。ダウンロード違法化を実現したところで、およそ権利者側が望む成果を得られないのではないかと危惧するためだ。結果として、「こんな権利者寄りの法律まで作りやがって」というネガティブな印象を生むだけで、実質的な成果(違法コンテンツの減少)を得られないのではないかと予想する。もともと違法にアップロードされた著作物について、ダウンロード側でも違法とみなすこと自体に、それほど不自然さは感じない。だから「消極的反対」なのである。
保護期間の延長については、「孤児作品が増えかねない」ことが唯一の反対理由である。著作財産権を否定する意見や、共有すべき文化財だとする意見もあるが、現実に著作物で生計を立てている著作者はいるのだから、子孫のために財産を残そうとする一般労働者と区別する理由はない。ましてや税金で制作費をまかなってくれるわけでもないのに「共有財産」と言われても、受け入れられないのは当然だろう。著作権など不要だと主張する識者ですら、自身の著作物の保護を求めるくらいだから、説得力は何もない。本来、著作物は著作権者の許諾を受ければ使用できるのだから、「保護されている著作物は使われない」という主張にも同意できない。しかし、許諾を受けたくとも問い合わせ先がわからない「孤児作品」が増えてしまうとしたら、その著作物にとっても利用者にとっても不幸なことである。
ちなみに、今回私はパブコメを送らなかった。これは3月下旬に1週間熱を出して寝込んでしまったことなどから、時間的(かつ精神的)余裕がなくなってしまったためである。ちょっと恥ずかしい(かつ、大変残念である)。