やっぱり JASRAC は著作者の保護よりビジネスが大事
唐突ではあるが、ビジネスで重要なのは何だろう。やはり「
お客様を大事にし、お客様本位で活動すること」だろう、というのが今回のエントリ。
先日のエントリで、「
JASRAC の FAQ によれば、JASRAC が管理する日本の楽曲についてはシンクロ許諾が得られる」と書いて、包括契約にシンクロ契約が含まれているようだ、と訂正したのだが、この訂正こそが間違っていたようだ。JASRAC に尋ねたところ、この FAQ は動画投稿サイトとの包括契約とは違うものであり、動画投稿サイトについては以下を見よ、とのことだった。
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http://www.jasrac.or.jp/release/07/07_4.htmlつまり、「
動画投稿サイトとの包括契約にシンクロ許諾は含まれない」ということ
らしい。というか、ちゃんと「包括契約に JASRAC が定義する意味でのシンクロ許諾は含まれるのか」と尋ねたのだが、
直接的な返事はもらえなかった。次の質問として「シンクロ許諾」の定義について尋ねようと思っていたのだが。
シンクロ権が著作者人格権になるという話は、「ソフトバンクのCMでオリビア・ニュートンジョンのザナドゥを使うのに、原盤を使って映像に音を合わせるシンクロ権は巨額になるから、(声の)そっくりさんを使っている」というニュースで書かれていたものだ(ニュース記事は軒並み消えてしまっているようだ)。そのこと自体に対する
もっともな問題提起もあるわけだが、「シンクロ権」というからには、そういうレベルのものを指すんじゃないかと思う。実際、
こちらのサイトでは「著作者人格権」の中で「シンクロナイゼーションへの配慮」という項目が書かれている。
実際、「映像に音楽を合わせる」ということは、音楽にその映像のイメージを結びつけることになる。これは純粋に楽曲そのものを楽しむこととは違う。『キルビル』のスプラッターな映像を見ていながら、突如『ウィークエンダー』の世界に吹き飛ばされえてしまったのは、Quincy Jones の Ironside のサビがジングルに使われていたからだ。(この時代にシンクロ権への配慮があったのかどうかわからないけど)
一方、前述の JASRAC の Web サイトにある Q&A をみる限り、
JASRAC が定義するところの「シンクロ許諾」は著作者人格権にはあたらないということ
らしい。なぜなら、今回の質問を通じて「JASRAC が扱うのは著作権だけで、著作者人格権を扱いません」と明言されてしまったからだ。「おふくろさん」についても、同一性保持権侵害になる場合は利用許諾できないというお知らせが公開された。
扱ってないものを許諾できないだろうから、JASRAC の定義では「シンクロ許諾は、あくまで著作権の範囲」ということらしい。
しかし、この言い分には疑問がある。少し古い記事だが「
着メロの著作権料はだれのもの?」には、次のように書かれている。
着メロの場合,権利処理がルール化されており,「45秒以内,転送不可のデータであれば,1曲につき5円をJASRACへ支払えばいい」(ミュージックエアポートの斉藤豊プロデューサー)。そのため,新曲が発表された直後から,着メロとして配信が可能だ。
おい、こら! JASRAC は「
音楽ご利用のご注意」で、
(1)著作者人格権の侵害にご注意ください。
著作物の歌詞の翻訳や替え歌、編曲、切除など作品を改変する行為は、著作者の意に反すると判断された場合、著作者人格権の侵害に当たります。
と書いているわけだが、45秒以内に「作品を切除する」ことが著作者人格権の侵害にあたらない保証はあるのかよ。かつて大島渚監督らが、テレビで放送される映画について「ワイドテレビで横長になるのは同一性保持権侵害だ」と訴えたことがあるけれど、「
おれの曲のサビの部分だけ使うなんて気にいらねー」という著作者がいたら、その
意に反して「作品の切除」を許諾していることになるんじゃないのか。
ところで「
YouTube,英国の音楽著作権管理団と著作権使用料について契約」などで取り上げられた英国の音楽著作権団体と YouTube との包括契約はどうなのだろう。英国の著作権法についてはまったく知らないけれど、もともとベルヌ条約では、
著作者は、その財産的権利とは別個に、この権利が移転された後においても、著作物の創作者であることを主張する権利及び著作物の変更、切除その他の改変又は著作物に対するその他の侵害で自己の名誉又は声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利を保有する。
となっている(テキストはウィキソースより)。
日本は「意に反して」いるかどうかだけで問題にされるから“強すぎる著作者人格権”なんて言われるわけだけど、ベルヌ条約レベルであれば「著作者の名誉や声望を害するおそれがない」なら異議を申し立てられることはないということかもしれない。これが、YouTube のような動画サイトに対して、音楽の包括契約を結べる理由でもあるだろう。名誉や声望を害さない責任は引き続き動画制作者にあるわけだが、それを守っている限り、あとは「著作権」の範囲で処理できるわけだ(だから、著作者人格権としての「シンクロ権」も関係ない)。
なるほど、
日本の強すぎる著作者人格権は、動画投稿サイトと音楽著作権管理団体との包括契約を困難なものにしているから、ビジネスを阻害している実例といえるのかもしれないね・・・って、だからニコニコ動画とか eyeVio と
包括契約してるじゃんか。フェアユースの規定もないのに。要するに、JASRAC は、日本の強すぎる著作者人格権で著作者の「意思」を守ろうなんて、あんまり考えていないんじゃないだろうか。だって、JASRAC に「お金を払ってくれるお客様」は楽曲を使うユーザーなのだからね。法律を厳密に解釈して著作者の意思を保護するより、お客様のニーズに応えてくれる JASRAC は、
実にお客様思いの団体なんじゃないか、という話でした:-p