「JASRAC の独禁法違反疑惑」に浮かれすぎていないか?
「
音楽著作権管理、JASRAC独占の疑い・公取委が立ち入り」(日経ネット)などで報じられているとおり、
JASRAC に公正取引委員会が立ち入り検査したわけだが、今までカスラックだの何だのと言っていた人の浮かれたコメントばかりが目立つ。しかし、これは「JASRAC の横暴が告発されて警察にガサ入れされた」とかいうニュースじゃない。
疑いは「独占禁止法違反」で、上記記事によれば、
放送事業者は、JASRAC管理下の曲は定額で使い放題である一方、別の著作権管理事業者の管理する曲を使う場合には追加支出が生じる形となっている。このため公取委は、放送事業者が新規事業者と新たな契約を結ぶことを制限しているとして、JASRACが市場を実質的に支配したと判断したもようだ。
とある。つまり、
JRC だか
e-license だか知らないけれど、とにかく
「別の著作権管理事業者」にとって不公正な独占状態なのだと言われているわけだ。JASRAC は、長年にわたって、ほんとうに音楽著作権管理業を“独占”していたわけだから、主要レーベルを含むほとんどの商用楽曲の著作権は、今なお JASRAC が管理している。そして、これには外国曲も含まれる。放送事業者にとって、JASRAC 楽曲でほとんど済ませられるのであれば、わざわざ追加コストを払って他の著作権管理事業者と契約することが面倒がられるというのは容易に想像できる。
wikipedia によれば、2006年度の
私的録音補償金のうち
JASRAC には4億1千万円が分配されたのに対し、
e-license と JRC には411万円が分配されたそうだ。具体的な調査データを調べきれていないが、外国曲も含む JASRAC と、これら2社との楽曲数(あるいは実際に使用されている数)の比率は
100:1なんて比率ではすまないのではないか。もし、これらの「別の著作権管理事業者」が「JASRAC の料率は安すぎて不公正だ(要するに不当な廉価販売)」と主張したらどうなるだろう。
もっと身近な例で考えてみよう。インターネットを通じてストリーミング配信する場合(非商用)、JASRAC では月額1,000円で何曲でも配信できる。年額なら1万円だ(
使用料規定)。前にも書いたとおり、JASRAC の個人向け使用料は極めて安価だと思う。では、JASRAC より、ずっと管理楽曲の少ない e-license ではいくらだろうか。実は、e-license も月額1,000円である(
使用料規定PDF)。JRC は収入がないサイトについて権利委託者の同意のもとで使用料を免除する規定はあるが、そうでなければ月額5,000円である(
使用料規定PDF)。必ずしも管理楽曲数に比例させる必要はないが、包括的に利用するために「JASRAC が月額1,000円だから、e-license は月額10円ね」ということにはなっていないのである。
JASRAC は、
4月23日(水)、公正取引委員会がJASRACに立入検査を行い、JASRACはこの検査に全面的に協力いたしました。
今後の対応につきましては、検査の結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えています。
という短い
プレスリリースを出している。彼らの言う「
適切な対応」が、「公正取引委員会のご指摘を受けて、上限の1,000円を廃止します」あるいは「適正な使用料の設定(要するに
値上げ)」にならない保証があるだろうか。公正取引委員会が検査をしたところで JASRAC が解体されるってことはないだろうし、ましてや著作権法がなくなるわけでもないのだ。そう思うと、浮かれる気分にはまったくなれないと思うのだが。