mohno

ドメインに関する話題を取り上げます。と思いましたが、まあ色々と。

オンライン音楽配信のコスト

heatwave さんの「オンライン音楽配信だからってゼロコストなわけじゃないんだよというお話」というエントリについて、「音楽配信事業でインフラに要するコストはエンドユーザーが想像する以上にデカイ。世界中からの過大なアクセスに耐えられるフォールトトレラントなエンタプライズサーバ環境維持は半端じゃない」というブックマークが付いていて、「そんなにコストがかかるものかなあ」と気になったので考えてみる。

コンテンツ配信サイトで常に話題になるのが回線コストである。もちろん、配信するためのサーバー調達費やら、電気代やら、メンテナンスコストというものはあるわけだが、これらは相対的には小さなものだ。iTunes Store のような巨大サイトでなくても、まともにコンテンツを配信するポータルサイトを作ろうとすると、その辺のレンタルサーバーを借りて実装するというわけにはいかない。YouTube のような膨大なコンテンツを配信するサイトは、Akamai のような CDN(Content Delivery Network)というものを使っている。コンテンツ配信のために集中管理されたデータセンターから配信するのではなく、地理的に分散したサーバーを利用するものであり、当然「格安レンタルサーバー」と同列にコストを論じることはできない。これが上記のブックマーク・コメントの言いたいことであろう。

実際に、CDN のコストについて明確な料金表を見かけることがないのだが(勤務先で使っているところを調べろよ、というなかれ。そんなことをしたら公の情報として書けなくなる。まあ、たぶん教えてももらえないだろう)。たとえばニコニコ動画についての西村氏へのインタビュー記事には、こう書かれている。
自前で動画サイトを持った場合の年間投資額を試算すると、ドリームジャンボ宝くじくらいになります。
というわけで、年間3億円くらいかかるらしい。つまり、月間なら2500万円。ニコニコ動画は10Gbps程度の回線で始まったはずなので、これをベースに考えてみる。10Gbpsの回線がフルに使われているとすると、1秒あたりに転送できるのは1.25GB。1か月で3240TBとなる。稼働率が40%程度だとすると、月間転送データは約1300TB。つまり、1GBあたりにかかるコストは約20円となる。楽曲の場合、256kbpsの品質だとしても4分の楽曲に必要なサイズは8MB程度だから、「回線使用料」だけを考えたら1曲あたり約0.16円となる。もちろん、それだけではすまなくて試聴などの分もあるのだが、そのために10倍のコストがかかるとしても1.6円。音楽配信というサービスに限れば、システムさえ作り上げれば楽曲販売のための“流通コスト”はかなり小さいと思う。

ちなみに、アクトビラが配信している映画の場合、8Mbps で 2時間の HD 映像を想定すると3.6GB だから、映像全体を配信するために必要なコストは上記を想定すると72円(ただし、4Mbpsの HD映像もあるようだから、その場合は半分の36円)。HD映画で315円というものもあるようだが、このサービスの料金に対して、回線使用料が占める割合は、けっこう大きいようだ。

※注意 上記のとおり、この計算は「ニコニコ動画に関するインタビュー記事」をベースにしているので、かなりいい加減なものだと思う。せいぜい桁は違わないんじゃないか、くらいで読んでもらえるとありがたい。たとえば、Silverlight というプラグインを促進するための Silverlight Streaming という無料動画配信サービスがあるのだが、月間5TBのデータ転送まで無料で使用できる。上記をベースに計算すると……:-O

※2008.4.28追記。上記は、「エンタプライズサーバ環境」というコメントに対応して、運営のために必須の配信コストだけを考えたものだ。はてブで「システム作っちゃえば配信コストは安いものですけど、(著作権料を別にして)原盤製作+製造+流通+宣伝+管理」とコメントした通り、ビジネス全体としては、もっと費用がかかる。たとえば、CD を一切やめたところで、音楽ビジネス全体としては、原盤制作(アレンジしたり、演奏したり、色々)とか宣伝とか売上その他を管理するコストがなくなるわけじゃない。heatwave さんのエントリが示している「流通コストを減らせたってゼロコストにはならない」を否定するものでは、もちろんない。念のため。

posted on 2008年4月26日 1:56 投稿者 mohno

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