mohno

ドメインに関する話題を取り上げます。と思いましたが、まあ色々と。

ネット規制と審査機関

ふたたび「携帯向け“健全”サイト認定機関EMAが初総会,審査料は100万円前後に」について。これをプライバシーマークの審査料と対比するだけでは誤解を招くかなーと思って、メモ代わりに昨日のエントリを書いておいたわけだけど、さっそく小倉弁護士から、
この種の審査の対象って,CGMを含まないものについては申請段階でアップロードされているコンテンツを全て閲覧して行うだけの話だし,CGM系の場合は,年齢等にかかわらずアクセスできる領域への有害情報の投稿を予防するシステム及びそれをすり抜けて有害情報が投稿されたときにこれを発見して削除し又は青少年でないことが明らかな者しかアクセスできないようにするシステムの設計及び運用について審査するだけですから,プライバシーマークの取得に比べて審査対象が相当狭いと思うのですけどね。
言われてしまった。で、まあ、そういう話ではないんじゃないかな、という話。

正直に言って、EMA が何をやろうとしているのかわからない。だから、どんな審査をするのかもわからないのに“ボッタクリ”とは言えないと思う(その可能性が高いのだとしても)。たとえば、Yahoo!モバイルを審査してくれというときに、ほんとうにサイト全体をページごとに「すべて閲覧」する手間をかけるとしたら、それこそ100万円程度では足らないのではないか、という気がする(。もっとも、Yahoo! にはオークションも掲示板もあるわけだけど、いわゆる直接的なアダルトコンテンツを持っているわけではないし、不適切な投稿には対処しているだろうから、審査結果が「有害」認定されないだろう。というより、有害認定されるような基準だったら、その方が驚く(※注)。そこまでして“認定”を受ける必要があるのだろうかと思うが、記事によれば、
認定サイトは携帯電話/PHS事業者のフィルタリング・サービスに反映され(関連記事),18歳未満の青少年による閲覧を担保する効果がある。
ということである。つまり、フィルタリングを利用するときには、認定サイトしか使えないということになるなら、青少年に使ってもらうためには認定を受ける必要がある。おそらく公的機関が「審査」をする場合でも、この仕組みをとる限り、同じことになりそうだ(ついでに言えば、私は公的機関の方がコストが安くなるという期待も持っていない)。それこそ「ポケモンだいすきクラブ」のような何の必要性がなさそうなサイトでも、コンテンツに応じた費用が必要になるのだろう。これがフィルタリングに引っかかってしまうことになれば、結局「フィルタリングを使わない」ように設定されてしまうのではないだろうか。

何らかの規制が必要と考える私ですら、これは望んでいる姿ではない(実効性のない制度は嫌いだ)。たとえば、(法律でないにせよ)自治体が定める青少年条例でいうところの「有害図書」は、すべての出版物の審査を義務付けるものではない(ビデオや映画は“適法”かどうかは全数審査されるし、レイティングという仕組みもあるけれど)。それこそ、成人向けコンテンツなら、最初からフィルタリング(棚を分けるとか、ビニールかぶせるとか)はされているのであって、それとは別に「一般向けに売られた書籍」が、たまに「有害図書」の認定を受けるだけだ。あやしいサイトを除外するブラックリスト方式だと、ブラックリストに登録されていない問題のあるサイトが残る面はあるから、安全なサイトだけを利用できるホワイトリスト方式を選ぶということ自体には賛成するのだが、ホワイトリストに登録するための、それなりのコストがかかるというのでは、事実上、青少年向けのサイトを個人が作ることはできなくなる。これは100万円が10万円になったからといって変わらないだろう。

有害認定すべきサイトは多いのかもしれないが、地図情報、路線検索、ホテルや施設の公式サイトなど、審査なんてしなくたってホワイトリストに登録してよいサイトはいくらでもある。であれば、「有害図書」と同じ程度の“基準”を示しておいて、自己責任でホワイトリストに登録できる仕組みがあってもよいと思う。審査機関が抜き打ちで検査したり、不正の報告を受けることもできるだろう(そして、運営コストの負担などを考えると、公的機関の方が好ましいように思う)。この場合、“責任”が生じるのだから、匿名での登録はできなくてよいし(個人情報の公開は必要とせず、審査機関が追跡できればよい)、登録したにもかかわらず有害コンテンツへの対応が放置されているようであればペナルティを課すといったことが考えられる(何年かは再登録を禁止するとか)。

別に、ここに書いた方法でなくてもよいのだが、冒頭の記事のようにハードルを上げすぎることは、かえって規制反対派に材料を与えてしまう懸念がある(お金目当てとか、非公式サイトの排除だとか、実効性がないとか)。あるいは「始めたはいいけど続かなかった」といったことにでもなれば、「規制必要論」自体が消し飛んでしまうかもしれない。いずれにせよ、もう少し間口を広く残しておける方法はないものだろうか。携帯は、親のリテラシーに関係なく比較的適切な規制をかけやすいものだと思う。ここで失敗すると、パソコンでのネット規制なんて現実離れしたものと受け取られてしまうだろう。

※注 広告モデルにより携帯サイトの場合、いわゆる「18禁」が広告として表示されることは少なくないようだ。これはしかし、広告自身の表現に問題があるのでなければ、有害認定する必要はないように思う。もちろん、リンク先はフィルタリングに引っかかるだろう。むしろ、「18歳未満の青少年は有効な広告対象でない」と切り捨てられて有益なサイトが使えなくなるようなら、それはそれで残念である。

posted on 2008年5月3日 1:15 投稿者 mohno

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