mohno

ドメインに関する話題を取り上げます。と思いましたが、まあ色々と。

MYUTA が生き残る方法はあったのか

docomo の「ポケットU」が、とても MYUTA に似ているらしいのに大丈夫だったのはなぜだろうか。今回は事前に確認済ということ(のよう)だけれど、大企業だからって知的財産権でのポカミスがないわけでもなく、論理構成を間違えていれば MYUTA と同じ結果を招いた可能性だってあったはずだ(ホントか?^_^;)。このあたりを、wikipedia やネットを斜め読みしながら考えてみる。

今回は、「CDからリッピングした楽曲」ではなく「音楽」と表現していたことがポイント(のひとつ)ではないかと思う。カラオケ法理で権利侵害を訴えるためには、当然、“権利者”の著作物が扱われていることが前提だ。なにしろ、他人の著作権が侵害されていると告発しても当人が問題ないと言えば問題ない。これに対し、MYUTA は最初から「CD からリッピングした楽曲」を扱うことを宣伝文句にしていたし、裁判でも管理する対象が JASRAC 楽曲であることを争っていない。

たとえば、YouTube が「テレビ番組をアップロードして、いつでも好きな時間に見られます」ということを宣伝文句に書いていて、かつ「権利侵害するのはユーザーであって、我々は場所を提供しているだけです。権利者から侵害だと報告があったらプロバイダ責任制限法に従ってコンテンツを削除します」と言ったら、たいして時間もかからず、オフィスから段ボールが運び出されるんじゃないだろうか。(とはいえ、ファイルローグって、こんな話じゃなかったっけね?)

しかし、「動画」とか「音楽」であれば、それが必ずしもテレビ局や JASRAC の著作物だとは言えない。あくまで、一般的な作品に対するサービスとしてであれば、これを止めることはできない。実際、WinMX のときには(Winny でもそういう人はいたが)、「自作の楽曲を広めるのに使うんだ」という大義名分を主張していた人はけっこういたように思う。WinMX を使うこと自体も禁じられていなかった。Winny の匿名性は、その用途には不要なものだが、Winny も禁止されているわけじゃない。そして、サービス提供者は、あくまで権利侵害があった場合に、notice & take down で対処していれば身を守れるのである(P2P じゃ止めようがないけど)。一方のファイルローグは、サービスが CD からのリッピングを前提にしていたようだから、「JASRAC 楽曲の権利侵害」という形でカラオケ法理をあてはめられたということではないだろうか。録画ネットも同じで、「テレビ番組」というテレビ局(関係)の著作物が対象であることが前提のサービスだった。

つまり、「ポケットU」のように、一般的な動画や音楽に対するサービスという位置づけておけば、「テレビ局の著作物」や「JASRAC の管理楽曲」という特定の対象について権利侵害を起こすという形ではカラオケ法理を適用できないのではないか。であれば、行為の主体はあくまでユーザーだ。そうであれば、ユーザーは、自分自身のためにしかコンテンツを利用しないのだから、“公衆”送信にならず権利侵害もない。ただし、「ポケットU」というサービスが(複製を行う場面があるなら)公衆用複製装置にあたるかもしれない気もしないではない。ちなみに、MYUTA は、カラオケ法理の適用を逃れたとしても公衆用複製装置にあたりそうである。

あと、ファイルローグの場合、一般の「音楽」が対象だと位置づけたとしても、ユーザーは不特定を相手に送信することになれば、送信可能化権侵害になるから、たぶん、米国の代位責任だってアウトなんじゃないかと思う。napster だって、ダメだったんだし。ただ、カラオケ法理の適用できないとすると、行為の主体はユーザーで、あくまで責任を問う相手はユーザーということになる。wikipedia に引用されている論評には「この判決は、ソフトの開発自体を著作権侵害の幇助になるとしているのではなく、ユーザーが著作権侵害に利用するであろうことを認識、認容しつつ、当該ソフトを被告が提供したという理由で有罪としたものである」とあるから、ここは一段踏み込んで適用したという面はあるのかもしれない。

ちなみに、docomo がサーバーを提供したりせず、ユーザー自身のパソコンから直接著作物を利用する形になっていて、そもそも“複製”は行われていないのかもしれない(もちろん圧縮データをメモリに展開といった点を除いて、だが)。複製せずにアクセスしているだけなら、複製権侵害にならないんだろうから、そういうことかもしれない。まあ、思いっきり間違っていたとしても、そのうち誰かがちゃんと解説してくれることに期待して、記録しておこう。

しかし、なんだ。「ポケットU」は、はからずも MYUTA 事件が「萎縮効果」を招かなかったことの証拠になったわけだな。ついでにいえば、「こんなに悪影響があって萎縮効果を招くぞー」なんて言っている識者の方が、よっぽど萎縮効果になってるんじゃないかということも付言しておく。

posted on 2008年5月28日 2:20 投稿者 mohno

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