主におごちゃん用(2)(やっぱり長文)
おごちゃん、
はやっ。いや、今朝、すでに返信が書いてあるのに気づいてたんですが、家族で出かけてしまったので、やっぱり、すぐには返信できませんでした。
さて、本題。
私も、もちろん「パネルディスカッション」のつもりというか、おごちゃんに対してだけ返事を書いているつもりではない。(そんな話ならメールすりゃいいもんね) 今回のエントリには「なんか、話違ってきてね?」という突っ込みどころもあるんだけど、それは後回しにする。あと、けっこうあちこちで書いたことの焼き直しになっているんだけど、まあ、それはそれということで。
まずは前置き。コンテンツというのは、いろんな種類があって、音楽とか連続ドラマとかニュースとか映画とかいうものを一緒くたに考えて同じ結論を出すことはできない。かなり著作権的には怪しそうな
CDTube(CountDown Tube)は、『コンテンツフューチャー』によれば、レコード会社から「ギリギリ大丈夫」と判断されているそうだ。CDTube が使っているのは、YouTube に無許可でアップされたプロモーションビデオ(PV)だけど、PV なんて、そもそもは楽曲を宣伝(プロモーション)するためのものだし、テレビだったらどんどん放送してほしいと思っているようなものだろうから、そういう判断になるのも頷ける。何しろ、これを運営している当人が匿名でもなんでもない。とはいえ、これをもって「コンテンツ共有は黙認される時代になった」ということはできない。
そういうわけで、ここではテレビドラマとか映画のような映像コンテンツを例にとる。おごちゃんは、違法コンテンツのおかげで吟味できるようになり駄作にお金を払わなくて済むようになったと書いてたわけだけど、じゃあ「吟味」してる人たちの基準って何だろう。それって「お金を払ってでも、もう一度見たいようなもの」だったりしないだろうか。おごちゃんがどうかはわからないが、そのように仮定して話を進める(だって、ネットで見て、もう見ないけど1回は見る価値があったから、見ないのにレンタルするとか DVD を買うというシチュエーションって想像しにくいもの)。
実は、映像コンテンツって、一度見れば済むものが多く、何度も見るようなものは誰にとってもそれほど多くない。いや、実のところ自宅には「いつかもう一度見たい」と思って録画したけど、結局見ていないテレビドラマというのがけっこうあったりする(それでも私は同じコンテンツを何度も見返す方だと思うけれど)。レンタルビデオがコンテンツ業者にとっても利用者にとっても受け入れやすいのは、「一度見て返す」のが普通のビジネスだからだ。ちなみに、日本独自のレンタルCDが海外で一般化しないのは、音楽は繰り返し聴くものだから「複製して返す」のが慣習となっているからだ。
そういうわけで、映像コンテンツでは「一度だけは見てもらえるもの」と「もう一度見たいと思ってもらえるもの」は、けっこう差がある。後者のハードルは高いにもかかわらず、「お金を払ってでも、もう一度見たいようなもの」を基準にされると、「一度だけは見てもらえるもの」程度ではお金がもらえないことになる。違法コンテンツの利用者は「駄作がすたれるだけ」というかもしれないが、ほとんどの映像コンテンツが「一度は見てもらう」レベルで作られていると考えたら、そのような基準を当てはめるのは酷なのだ。極端な例でいえば「手品の種明かし」みたいなものは、どこかで見たら、もう一度お金払ってまで見ないでしょ。
違法コンテンツで吟味しているユーザーは、“厳選”してお金を払っているという気になっているかもしれないが(お金を払っているとして、だけど)、それって一般の人よりもお金を払う条件を都合よく制限しているに過ぎない。
そもそもコンテンツの良し悪しなんて、見た人の主観によるものだから、コンテンツが良作とか駄作なんて一意に決められるものですらない。最近、DVD の値段が下がっているのは、(一部ユーザーを除く)大多数を相手に薄利多売を狙ってくれているおかげであって、おかげでさまざまな分野の映画を自由に見ることができる。お金が払われるのは“厳選”したものだけってのが“当たり前”になったら、それこそ“売れ筋”以外のものしか作られなくなると思うんだが、それって本当に良い世界?
あと、大きく誤解されているかもしれないなと思う点を書いておくと、私が違法コンテンツを批判しているのは、決して権利者側の立場で言っているのではない。周知のとおり、勤務先は商用ソフトウェアを扱っているが、その不正使用については会社として糾弾し、対処するものだから、私が個人のブログでまで糾弾する必要はない。
ユーザーの立場で考えれば、コンテンツは自由に使える方がもちろんよい。そして、先のエントリに書いたとおり、たいていのユーザーは合法にコンテンツを使用している。報道された統計データによれば「着うた」については、けっこう深刻な割合で不正使用されているようだし、前述したとおり、ネット上の違法コンテンツが、ネット上の新たなビジネスに悪影響を与えている。しかし、現実におけるコンテンツについていえば、「一部の不正使用者のために」複製が極度に制限されたり、できなくなったりしているのだと思っている。
「言っても無駄」とは書いたが、いま一度、おごちゃんに考えてみてほしい。「もはや違法コンテンツは一般化しているのだ。誰にも止められない」「一億総著作権侵害時代なのだから、コンテンツを保護しようとしても無駄だ」「複製が容易になった時代なのだから、それを受け入れよ」 このように“識者”が寄ってたかって声高に叫んだら、コンテンツ業者がどう思うかを。彼らの意見を聞き入れて、自由な複製を認めようとするだろうか。しかも、自分で著作を持っている識者が、自分の主張に従って行動せず、説得力がまるでないことも多い。こうした話を聞いた業者が、より厳しく複製を制限したがるだろうという推測を、私は否定できない。
事実かどうかはともかく「最近の若者ってゲーム感覚で万引きしてるんだよね。悪いことしてるって意識がないんだよ」という風潮が広まったとしても、あるいは「万引きによる経済被害は GDP に影響していない」という調査結果があったとしても、万引きを受け入れようとか、合法化しようなんて話にはならない。その意味で、違法コンテンツは違法として取り締まるべきだ。また、複製が容易になったことを悪用して私的複製を超えた営利目的の著作権侵害行為を防ぐ方策も必要だ。そして、それはコピーワンスとかダビング10じゃなく、EPNで十分だ。ユーザーとしては「そんなに厳しくする必要はないんですよ」というメッセージを出したいのに、他の(過度な)自由を求めるユーザーの主張にかき消され続けるジレンマをどうしてくれようか。
最後に、後回しにした「突っ込みどころ」について。
ひとつ前のエントリで「コンテンツの質低下が云々の話もあるけど」って書いてあって、今回のエントリでは「「騙したな。金返せ」と感じるものは減ってるように感じてます」って書いてあるんだけど、コンテンツの質が下がってきていると思っているのか、上がってきていると思っているのか、どっちなんでしょ。
私は、平均すれば概ね質は上がってきていると思っているんですけどね。それはもちろん「ネットでの事前吟味」のおかげなんかじゃなくて、機材の改良とか、廉価化とか、プロジェクト制作の体系化ということが理由なんだろうとも思っていますが。そうでなくてもコンテンツがマルチユース(映画館とか DVD とか、それを題材にしたゲームとか、グッズとか)されることで、コンテンツ自身にかけられる費用はずっと増えているはずなんですよ。テレビ番組については、以前の方が“自由”な番組はあったでしょうが、個人情報保護とか表現規制を考えるとやむを得ない面はあるんじゃないかと。
あと、「一番高コストにつくのは自分の時間」というのはそのとおりで、その意味で自分に対する投資をケチるなよ、と言いたいですね。
しかも、「ニコ動や割れものを探さざるをえないのは、絶版になっている音源があるからです」って、「お金を払う前に吟味する」って話じゃないじゃん。たとえば、日本の著作権法では、第67条で著作権者が不明な場合に使用料を供託する仕組みがあったりしますし(業務目的ですが、アメリカにはそういう仕組みすらないらしい)、それこそネットを活かした fukkan.com のようなサイトもあります。私もオークションで探し続けているものが、いくつかありますよ。
あと、最後の CD の件について、私は音楽は「全体を試聴」があってもよいと思っています。上記で取り上げた映像コンテンツと違って、音楽は「繰り返し聴く」が普通だから、一度試聴されただけで売上に影響する可能性はまずないです。というか、普通聴いてから買いますよね。実際、アメリカだと、アルバム全部をストリーミングで配信している例もあります。日本のレコード会社・アーティストにもまねしてほしいんですが、DRM 付で配信したとしても「技術保護手段にあたらず回避して複製するのは合法」という“ユーザーの味方”論者がはびこるだろうことを思うと、強く言いにくかったりします。