コンテンツホルダーは不可解な抵抗をしているのか
机上の空論が大好きな小倉弁護士が、またも
空々しい空想を描いて悦に入っているようです。
日本では,「コンテンツホルダー」側の不可解な抵抗によって,この動きがコンピュータプログラムと商用音楽程度にしか普及していませんが,AppleTVやKindle等が利用できる米国では,映画や書籍などもネット配信が徐々に物理媒体による頒布を凌駕していく可能性があります。
現状では,そうはいっても電子端末の普及率がそれほどでもないので,多くの場合,「物理媒体でも頒布するコンテンツをオンラインでも配信していく」という程度にとどまっていますが,(以下、略)
小倉氏が頭に描いている電子端末とは、何を指しているのでしょうか。日本で着うたが使える携帯電話の普及率を考えた場合に「それほどでもない」と言い切るのは、なかなかできることではありません。あるいは iTunes Store を対象とした iPod/iPhone のことしか考えていないのかもしれません。RIAJ によれば、
2008年の音楽配信市場におけるインターネットダウンロード市場はざっと10%です。その半分がiTunes Store による売り上げだとすると、ざっと5%程度ですから、たしかに「それほどでもない」という表現は適切かもしれません。
ご存じのとおり、ネット嫌いで知られるジャニーズを除けば、たいていのメジャーな楽曲は「着うた」で流通しています。しかし、市場規模が小さいのであれば、そこに向けて、とくにメジャーでもない楽曲の配信に手間暇かけたりしないことは「不可解」でも何でもないでしょう。逆に、自社の機器を売り込むためにコンテンツの拡充が不可欠と考えて映画会社まで買収したソニーですら、米国では圧倒的シェアを持つ iTunes Store で Sony Music の楽曲を流通させているくらいです。ちなみに、小倉氏は流通していない例として "Disney系のSchoolhouse Rock" を
挙げられているのですが、
素朴な疑問として、これって何なのでしょうか。米国の iTunes Store で調べても(テレビ番組が見つかるだけで)特別、日米の差を示す例という感じはしなかったのですが。
まあ、シェアに関係なく、流通業者側の判断で商用コンテンツを流通させることができるのであれば、HD DVD が blu-ray 相手に苦戦することもなかったでしょうし、そうなっていたらリージョンコードのない次世代 DVD を楽しむことができたと思うと、残念なことではあります。
もっとも、Hulu なんかよりもずっと早くから広告ベースで営業してきた
GyaO というサイトがありますが、コマーシャルを見るのが嫌とかいう人々によって遠慮なくリッピングされたり、無邪気に喜んでいたりする人がいるくらいですから、そういうビジネスもなかなか大変な面はあるようです。といいますか、かつて CinemaNow のように米国のビジネスモデルを日本に持ってこようとしたのに、お金を払って利用する人が少なく撤退せざるをえないケースもあるくらいですから、業者側ばかり非難するのは酷ってものではないかという気がします。まあ、正月にテレビコマーシャルまでしていた
DMM.com は、それなりに頑張っているのだそうですが。
ところで小倉氏は、こうも述べています。
そのコンテンツの配信を受けられる人的範囲がその居住する地域により限定されていると,その地域外に居住する人々は,誰かによる違法行為を経ない限り,そのコンテンツを享受することができなくなる可能性が高いということです。
たとえば、CD で売られているようなものなら、amazon.com から輸入すれば違法行為はどこにも必要ない気はするのですが、そういうことではないのでしょうか。いや、小倉氏がアーティストとの契約や支払いよりも、まずユーザーのことを考えて
どんどん音楽を配信してくれる iTunes Store を気に入っているということは容易に想像できるのですが、普通は、アーティストとの支払い契約があってこそ、音楽ビジネスが成り立つと考えるものでしょう。その方が法律家としても普通の思考だと思うのですがね。
もちろん、最近話題になった google ブック検索の和解にみられるように、コンテンツ業者側(この場合は、出版社)がいっさい手間をかけずとも、流通業者(google)がコンテンツ(書籍)そのものをネット配信したり販売してくれて、申し出ればその分け前にあずかれるというサービスが現実のものになろうとしたりしています。これこそ、小倉氏の理想として掲げてきたサービスなのではないかと思うのですが、小倉氏が、この和解について何ら賛意を表明されていないのが、少しばかり不思議な気はします。小倉氏の著書も米国では流通していないので絶版(Out-of-Print)とみなされていますし、今回のデジタル化対象には含まれていませんが、協力図書館に書籍を送りつければ、何ら手間をかけることなく、自らの著書が通常流通しない米国の人々にも読んでもらえるチャンスが生まれます。もちろん、米国からアクセスできるものを日本からアクセスできないのはおかしい、とも主張されるのではないかと期待していますよ。