改正著作権法案がそのまま成立したら、海外アーティストの公式サイトからのダウンロードも違法になるのか?
MIAU の榎本温氏が「
改正著作権法案がそのまま成立したら、海外アーティストの公式サイトからのダウンロードも違法になる」というエントリで、
公式サイトでプロモーション目的で公開されている楽曲ですら違法扱いになるという指摘をされている。
「国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの」には、たとえばアーティストの公式サイトで行われている音源サンプルの配布がある。
以前、小倉弁護士も「
キャッシュの運命は如何に。」というエントリで同様の指摘をされていた。
自動公衆送信が著作財産権に含まれていない国でアップロードされたもの(当然,著作権者の意図にかかわらず,許諾はなされていない。)や,日本にはない権利制限規定(例えば,米国法のフェアユース等)により合法的にアップロードされているものをダウンロードする行為が違法となってしまいます。それはそれで価値判断的に如何なものかなあという気がしてしまいます。
まあ、小倉氏の指摘する点のうち前者(自動公衆送信)については、送信可能化権を規定した
WPPT に
90ヶ国以上が批准していることを考えると、あまり現実味のある心配という気はしない。というか、WPPT に批准していなくて、違法コンテンツをホスティングできるネット環境がそこそこ揃っている国って、どこ?
閑話休題。
まあ、たしかに公式サイトで配信されている楽曲を聞くことが「違法」になるなら、すごく問題だ。しかし、ダウンロード違法化の対象となるのはダウンロードしてファイルを保存することだから、“聞くだけ”なら該当しない。実際、普通に公式サイトがやっているのは音楽配信までで、保存を認めているところはほとんどないと思う。と、エントリの注釈を見ると「楽譜とかMIDI データ」を指しているということなんだろうか。ただ、はてブでもコメントされているが、
JASRAC の規定では「権利者が作品の宣伝・普及のため無料で行う複製物の頒布およびインタラクティブ配信には通常著作権使用料は発生しない」と明記されているようだから(
ここのコメント欄の福田氏によれば著作権契約書第10条)、それが宣伝目的なら、日本国内で行われたとしても JASRAC は権利を行使する必要はなく、著作権の侵害にもあたりそうにない。こういうものを日本のレコード会社が主体的に配信するかどうかとは別の話だ。
そもそも、
これが著作権侵害にあたるというのであれば、ダウンローダーだけでなくアップローダー(つまり公式サイトの運営者)も違法ということになるわけで、上記にもかかわらず依然「条文を厳密に解釈すれば違法になる」というのであれば、たしかに条文を直すべきとは思うけれど、現実には、何も問題が起きそうな気はしない。まあ、どうせ罰則規定もない話なんだから、削除したって問題ない気はするけどね。逆に、無許可のアップロードであるなら、それはサーバーがどの国にあっても違法とされるだろう。なぜか「海外にサーバーを置くと日本の著作権法を回避できる」なんて話がまかりとおっているようだけど、そんなわけないし。
まあ、何が問題かというと「使用する者が複製できる」という私的複製条項が今日まで生き延びてきたことだろうな。複製という行為のバリエーションがこれだけ増えてきている今ですら、形式的な行為で規定したおかげで何でも合法になってしまうんだから。これが“フェアユース”なら、「そんなのフェアなわけないじゃん」でおしまいの話。米国で開催されたあるイベントでフェアユースのミニセッションがあって、セッション後で講演者に尋ねてみたけど「この国では違法だ。机の上に放置してある本を勝手に持っていったら、それは盗みだろう?」と言っていた。その本は、実は誰かが持っていってもいいように意図的に置いてある(かもしれない)という“可能性”なんて考えないよね。それこそ思考停止。
いずれにせよ、こういう想像でしか、ダウンロード違法化を問題視できないのであれば、
ほんとダウンロード違法化って問題ないよねー、という印象をますます強めてしまうことになりそうだ。そもそも、MIAU 自身、アップロード側の違法性を問うなとは言っていないわけで、そうであれば違法にアップロードされたもののダウンロードを違法にしたからって深刻な問題が起きるわけがないんだけどね。
まあ、アップロード側で違法性を取り締まれ、って理屈はわからなくもないんだけど、民事裁判って弁護士費用とか自分で出さないといけないし、日本は懲罰的賠償金がないから、普通は訴えたら訴えるだけ赤字になるよね。そういう体力のあるところは限られているから、普通は(賠償金を諦める代わりに)刑事的に取り締まってほしいというところだと思う。名誉毀損だって、みんな刑事的になんとかしてもらいたがるよね。別に懲罰的賠償金を導入して、アメリカみたいに何でもかんでも訴訟沙汰の社会になることを望んでいるわけじゃないけどね。