『米国Googleの権利覇権と情報流通革命』参加報告
『
米国Googleの権利覇権と情報流通革命』というイベントに参加した。公私ともにそれどころじゃないわけだけれど、どうやら出版業界はつい最近になってあわてて色々対応しているようで、状況を知るいい機会だと思ったからだ。講師は
福井健策氏(どこかで、ケンサクつながりですか、とボケようかと思ったがやめた)。津田氏が
Twitter で実況中継していたので、詳細はそちらに譲るとして、概ね同氏が書かれているコラムに沿った話だった(
コラム1、
コラム2)。ただ、どころどころに突っ込みどころがあり、大げさに言えば、黙っているのがやや苦痛でもあった。以下、うろ覚えの部分もあるので、ご了承のほど。
福井氏の話で注目したのは、「日本の著作権はあいまいなので、出版社も著者も明確な対応ができずにいる」「現状は、とりあえず和解に残留した上で、数年をかけて明確化していくべき。」「今回のは第1ラウンドで、この先の第二ラウンドに期待している」といったところ。だが、後述のとおり「あいまい」ですませていることが問題を引き起こす可能性もあると思う。
さて、
これが、どういう流れだったかというと、まず福井氏が「出版社には契約によって出版権があるけれど、インターネットで配信する場合の権利はあいまい。電子出版が明記されている例は、少ない。そういうあいまいさが、対応を難しくしている」という話をされていた。私はインターネット配信も「出版権」の一部だろうと考えていたから、「出版権とインターネット配信が別個のものとして考えうるというのは意外だった」というところで、「別個とは言っていない。そういう理解になるのかわからない」という話になってしまったわけだ。
もともと出版社が「出版権」に言及しないのを不思議に思っていていたのだが、
荒俣宏氏のブログによれば、講談社からは「対応は各自で」と言われているようだし、文藝春秋社からは「日本の出版社には直接何の権利もないので、この和解に介入することができず」と言われているらしいし、その他の出版社も手続きを代行するという対応のようで、とくに出版権に言及している出版社があるように見えない。しかし、「出版権とインターネット配信が別個のものとして考えうる」なら、この対応もわからなくもない、という話である。実際には、先に指摘されているとおり、それはただ「あいまい」なだけであり、時間をかけて解決していくべきことだということではあったのだが。
そうは言っても、今回の和解が米国内のものということであって、ブック検索は世界中に広げようと考えられているプロジェクトである。実際、版権レジストリは米国で使用することだけを想定したものではない。ということは、出版社が今回「口をはさまない」と表明してしまうことは、ブック検索が日本にやってきたときに「口をはさむ」理由を放棄することになるのではないか。その疑問に対する福井氏の答えが
こちらである。
ちなみに、
こちらの質問は、もともと「米国で流通していないものは“絶版(Out-of-Print)”扱い」という点について、実際データベースではほとんどの書籍が絶版という印が付けられているのだけれど、福井氏がグーグル・ジャパンから聞いた話として「日本の流通で扱っているものは、流通しているとみなすよう米国に働きかけている」ということを紹介されたのに対し、私が和解管理者から聞いた話として「amazon.jp から米国に輸入できるものは、流通されている(Commercial Available)であるとみなす。データが間違っているのなら、出版社や著者が直せる」ということを紹介したものだ。ちなみに、福井氏は、私が受けた回答が現状で、グーグル・ジャパンは今後の対応ということであれば必ずしも矛盾するわけではない、と回答されていた。
あと、突っ込みたくなったのは、以下の点。
・福井氏「異議申し立ての方法は、わからない」
→ 和解サイトの
FAQ に書いてあるが、米国の裁判所に書類を提出し、関係する弁護人に書類を郵送か電子メールで送る。
・福井氏「表示使用の可・不可は、いつでも変更できる」
→そのとおりだけれど、報酬を請求して対価を受け取ったらできない、という話がなかった。
・福井氏「ブック検索の収入の 63% が著者に支払われる」
→
これもそのとおりだけれど、1冊ごとに得られる収益の絶対額がわからない(※2009.5.1追記)←失礼、間違い。デフォルトでは値段が勝手に決められるだけで、自分で単価を指定できる場所があった。(追記終了)(そもそもブック検索の立場は流通のようなものだから、印税と比較するのは変。今回はしていなかったけど)。
※2009.4.24追記。どうでもいいといえば、どうでもいいんだけど、支払いが行われるのは今から早くて5年先。だから、一部の書籍で収入状況をみてから対応を決める、というのは難しいだろうね。
・福井氏「フェアユースのおかげでグーグルが成功した」
→何度も言っていることだけれど、フェアユースのない日本で、キャッシュサーバーも日本に置いている Yahoo! は成功していないとでも?
・司会の仲俣氏「版権レジストリは、作家本人しか編集できない」
→誰でも編集できる。自分の著書を編集するときに、何の認証もなかった点で気がついてほしいと思うのだが。
・参加者からの質問「日本には個人情報保護法があるが、米国の会社に銀行口座を含む個人情報を登録するのは抵抗がある」
→私が言うことでもないんだけれど、版権レジストリに登録された個人情報の売買が行われるとは思えない。(no evil company なんだから、というのは冗談にしても)
※2009.4.24追記。
・福井氏「このビジネスが成功したら、海外にも進出するだろう」
→“ビジネスとして成功”してから進出する(成功しなければ進出しない)というわけではない。すでに世界中に広めたいという意思が
表明されている。実際、YouTube は膨大な赤字を出しているにもかかわらず、海外に進出している。
著者の秘書をされているという参加者の方が、「いまだによくわからない」と発言されていたのも印象的だった。
個人的には、とある出版社の方と、会場で久しぶりにお会いできたのがうれしかった。イベント後、さんざん愚痴を聞いてもらいましたとも。
※2009.4.25追記。
小倉弁護士が「
出版権の内容」というエントリで、出版権にネット配信が含まれないことが明確だという説明をされている。上記で「一部」と書いたのは、もちろん出版権を結んだ出版社はネット配信権を一部として含んでいて勝手に自由にネット配信できる、という意味ではない(私にも、確認はきます)。その意味で、ここは「一種」と書くべきところではあったのだが、いずれにせよ別個のものであるなら、出版権を結んだ出版社とは別の会社に対してネット配信契約を結んでも法的には問題がない、ということなのだろう(日本では版面権もないことだし)。講談社や文藝春秋社が「何の権利もありません」と言っているのは、ごく妥当な対応だということなのだろうか。意外であることに変わりはないし、やはり「いいの?」と思わなくはないのだけれど。
ところで、小倉氏は「弁護士を雇ってGoogleへの回答書のひな形を作らせて会員に頒布する」ことを勧められているのだけれど、「回答書」って何を意味しているのだろう。これはGoogle一社の決定ではなく、Googleと米国作家協会などとの間の和解の結果であり、だから和解管理者がいるわけで、しかも何も「回答」を求められているわけではないと思うのだが。“異議申し立て”であれば、(たぶん英語で)裁判所に申し立てないといけないだろうし、質問があるなら和解管理者に問い合わせ窓口から聞けますよ。
明日(というか今日)は、朝早くお出かけだというのに、こんなことしていていいんだろうか。