主張と行動の一貫性と説得力
※本エントリには、津田大介氏に対する不適切な指摘が含まれています。申し訳ありません。謝罪のエントリをご参照ください。はてさて、高木浩光氏から「
あいかわらず難癖が酷い」と言われたのでは、放置しておくわけにもいくまい。100字で返すのは無理だからエントリを起こす。
元は「
高木さんからの指摘について」というTさんのエントリに casm さんがはてブで付けた次の
コメントである。※ここでは、高木浩光氏(≠Tさん)とTさんとのやりとりの内容については触れない。
ほぅ、音ハメってWeb魚拓(全文)を禁止してたのか。
音楽配信メモを「音ハメ」と略すというのは意外だったのは、もっと意外だったのは
Tさんが自身のブログの魚拓を禁じていたことだ。そもそも禁じているとは思いもしなかったから、魚拓をとろうと思ったこともなく気づきもしなかったわけだが、たしかに「Web 魚拓」でこのエントリの URL を指定しても「robots.txtによってキャッシュが禁止されており取得できません。」というメッセージが出て魚拓は取れない。
断っておくと、「robots.txt を置くべきではない」と主張するつもりはない。検索エンジンが(勝手な)複製をしないように robots.txt を置いている人や組織はあるだろうが、必ずしも複製を嫌っているものばかりではない。たとえばコメントspamを避けるため、あるいは気楽に日記を書くため検索エンジンに見つからないように robots.txt を置いているという人もいる。検索エンジンに出てくる広告の質が厭だと言う人だっているだろう。それはそれぞれの人の考えであり、とやかく言うつもりはないし、言うべきこととも思わない。だが、このブログ主は他ならぬTさんである。そこで、次のように
つぶやいた。
casm さんがはてブで指摘していたが、「音楽配信メモ」が robots.txt を置き、web魚拓できなくしているというのは、驚いた。:-O DRM を否定し、コピーワンスもダビング10も拒絶している団体の代表なのに。→ http://tinyurl.com/lyeon8
これにTさんから次のような反応があった。
@mohno DRMを否定したことは一度もないですよ。音楽・映画・ゲーム・テレビなど、コンテンツごとに最適なDRM水準があり、その水準が透明なプロセスで議論されていけばいいというだけの話。コピーワンスやダビング10は公共性の高い地上波番組にかけるDRMとしては厳しすぎるという話。
12:04 PM Aug 31st
@mohno AppleのムービーレンタルはDRMは厳しいですが、動画配信という性格を考えたときに(料金と比較して)妥当なDRMかなと思います。
12:05 PM Aug 31st
とりあえず、コメントSPAMを避けるためとか、気楽にブログを書きたいために robots.txt を置いているのではないようだ(そもそもコメントが付けられるブログではないけれど)。ふたたび断っておくと、私は、コンテンツごとに適切な DRM 水準が異なるということには同意するし、地上派テレビの保護については
EPN を採用してほしいものだとずっと思っている。だから、想定されている水準がどうかという問題を除けば、このような主張はおかしい、というつもりはまったくない。一方、
以前にも書いたが、Web 魚拓はおおざっぱに言うと、「検証のための複製」(Web 魚拓のサイトには、この目的が書かれている)と「たんなる利用のための複製」がありうる。後者は、新聞社・通信社が公開期限がある記事を期限後にも読むためのものだ(もちろん記事の魚拓においても前者の目的はありうるし、正当な範囲での引用も Web 魚拓の目的に挙げられている)。先のエントリにも書いたとおり「世の中の多くの活動は、バランスの上に成り立っている」という意味で、Web 魚拓が後者の目的ばかりで使われるようになったら、規制されるかもしれない(それは、robots.txt を置く代わりに Web 魚拓の IP をはじく、程度のものかもしれないが)。
しかし、Tさんのブログはとくにエントリの公開期限が設けられているわけではないから、利用のための複製という目的を否定しているのではない。そりゃそうだ。そもそもTさんのブログサイトの末尾には「リンク・転載・引用・雑誌掲載などすべてご自由にどうぞ。連絡一切不要。」と書いてあるくらいなのだから。それにも関わらず「Web 魚拓」を否定しているということは、前者の目的
(検証)を拒否しているのだと理解せざるをえない。それこそが、Web 魚拓の目的なのに。しかし、本当に検証目的を否定しているのだろうか。たしかに先につぶやいたリンク先では「(あらゆる)DRMを否定」しているのではないが、Tさん自身が検証という目的の複製さえ否定しているのに、テレビ局や音楽業界がかける DRM を“最適な水準”でないということができるのだろうか。それとも何か他の理由があるのだろうか。そう思って次のようにつぶやいた。
@tsuda s/DRMを否定し/他人のかけるDRMを否定し/ それで、難なく手動でコピペできるブログエントリの機械複製を否定することの、どこが「最適な水準」なの?
3:40 PM Aug 31st
※注 「s/DRMを否定し/他人のかけるDRMを否定し/」というのは文字列の置換を意味する表現。
これに対する反応はなく、何を持ってブログの Web 魚拓を拒否することを“最適”と思っているのかはわからずじまいだ。
しつこく断っておくと、誰がどんな主張をしようともかまわない。「そんな主張をするな」という主張も含めて、それは言論の自由だと思う。もちろん、時と場所を選ばない主張が規制されることはあるだろう。自由は絶対的なものではなく、バランスの上に成り立っている。しかし、児童ポルノをダウンロードしまくっている人が、「児童ポルノという問題など存在しない」と主張して、説得力を持つだろうか(←Tさんがそう言っているという意味ではない)。
私はテレビや音楽のようなコンテンツ産業においては、供給側に属する人間ではなく、あくまでコンテンツを消費する“ユーザー”である。ユーザー側として便利な世界を望んでいるし、無意味な対価を支払いたいとは思っていない。ネットユーザーの代表を標榜する団体のリーダーが「検証目的の複製」すら拒むというのでは、ネットユーザーに対する突っ込みどころ、つまりユーザー側の提案を拒否する理由を与えてしまうだけではないだろうか。それが、
「技術的エンフォースメントの存在には意味がなく、結果としては何も変わらない」<なんで代表がブログの Web 魚拓を抑止している団体に、こんなことを言われなきゃいけないのかとは思うがね。
と
書いた理由である。100字制限のある短い文章から、上記のような意図をくみ取れとは言わないが、私から見れば高木氏のコメントの方が「難癖」である。
※2009.9.10追記。
はてブのコメントで指摘されたが、意図的に
Web 魚拓のみを拒否しているということのようだ。ご存じない方は少ないと思うのだが、T さんはジャーナリストを自称されているのだから、これでは「
発言の検証を拒否するジャーナリスト」である。